幹事に「選ばれる施設」は何が違うのか。月700件の問い合わせデータと実践企業の実践知から紐解く、宴会収益の作り方

需要は戻っている。なのに、取れていない。

バンケット稼働率を上げたいと思いながら、何から手をつければいいかわからない——そんな声を、多くの式場から聞きます。コロナ明けから宴会の問い合わせは確実に増えているにもかかわらず、「自分たちのところには来ていない」という感覚を抱いている施設も少なくありません。

2026年6月19日、ブライダル産業フェア2026にて開催されたセミナーでは、その答えに正面から向き合った60分が展開されました。登壇したのは、宴会送客サービス「Canjii」を展開する株式会社TAIAN 代表取締役CEOの村田磨理子氏と、多数の宴会・イベントを手がける株式会社ポジティブドリームパーソンズで執行役員を務める中村亮太氏。月700件超の送客データと、実際に宴会収益を伸ばしてきた組織の実践知から、「選ばれる施設の条件」が語られました。

目次

供給が減り、幹事が動いている。
需供バランスの変化が起きている今が、新規を取る絶好の機会

まず村田氏が示したのは、2026年の宴会市場の構造的な変化です。

コロナ禍で宴会需要が落ち込んだ時期、多くのホテルがバンケットをレストランや客室へと転換しました。その結果、需要が回復した今も施設数は元に戻っていない。さらに物価高・人件費高騰により、歴史あるホテルを中心に単価の引き上げも進んでいます。

この「施設数の減少×単価上昇」という供給側の変化に加え、幹事側でも人口減少による宴会予算の圧迫が重なっています。結果として起きているのが、幹事による「施設の乗り換え」です。これまで使っていた会場を離れ、新しい選択肢を探している幹事が、確実に増えています。

裏を返せば、今は新規幹事を獲得できる絶好のタイミングです。

ただし、乗り換えを検討する幹事が頼るのはオフラインの営業ではなく、オンラインでの検索です。「見つけてもらえる場所にいるか」「問い合わせに即座に応えられるか」この2点が、機会を取れるかどうかの分岐点になっています。

データから読み解く、幹事の「本当のニーズ」

では、実際に問い合わせをしている幹事は、何を求めているのか。村田氏はCanjiiの累計2,000件以上の問い合わせデータをもとに、3つの観点から「選ばれる施設の条件」を紐解きました。

1.開催目的によって、リードタイムはまったく違う

同窓会の平均リードタイムは約8.8ヶ月。一方、歓送迎会は約1ヶ月。同じ「宴会」でも、半年以上の差があります。にもかかわらず、多くの施設が同じ窓口・同じ対応フローで受けようとしています。

早期から動く層(同窓会・周年パーティーなど)には、早期予約の特典や相談フローを。直前に集中する層(歓送迎会・忘年会など)には、即断できる情報と対応スピードを。このような目的に応じた導線設計が、問い合わせを取りこぼさない受け皿になります。

登壇資料より / Canjiiの問い合わせデータより算出

2.問い合わせの45%は、営業時間外に届いている

Canjiiへの問い合わせのうち、18時から翌朝8時の間に届くものが全体の45%を占めます。夜19時から23時だけでも、月間100〜120件の問い合わせがあります。

幹事が宴会を考えるのは、仕事が終わった夜です。その時間に「明日確認します」という対応では、翌朝には別の施設に決まっている可能性があります。チャットボットや自動返信の整備、あるいはプラットフォーム経由での即時対応体制の構築が、機会損失を防ぐ鍵になるのではないか、と村田は語ります。

登壇資料より / Canjiiの問い合わせデータより算出

3.月別の「目的」に合わせた導線が、問い合わせ数を左右する

11〜12月は忘年会シーズン。この時期の幹事の多くは直前に動き、「この日空いていますか」「今すぐ決めたい」という行動パターンを取ります。コース内容をあらかじめ提示しておき、即決できるプランを用意しておくことが、この時期の機会損失を最小化します。

2〜3月の歓送迎会・卒業シーズンは、人数変動への柔軟な対応と、1ヶ月前に集中する問い合わせへの受け皿整備が重要です。

そして一貫して必要なのが、デジタルの入口を整えることです。施設の乗り換えを検討している幹事は、まずオンラインで調べます。プラットフォームへの掲載やAI検索対策は、もはや「やれればよい」ではなく、入り口に立つための前提条件になっていることが指摘されました。

登壇資料より / Canjiiの問い合わせデータより算出

「組織として勝てる仕組み」が、個人の頑張りを超える

後半は、中村氏による実践知の共有です。ポジティブドリームパーソンズは、宴会・ウェディング・レストランを複合的に展開し、宴会部門でも継続的に収益を伸ばしてきた企業です。中村氏が強調したのは、「単発のテクニックではなく、仕組みとして勝てる状態をつくること」でした。

1.顧客を4つに分けて、リソースの使い方を設計する

まず取り組んだのが、顧客の整理です。「法人/個人」と「新規/リピート」の2軸で顧客を4象限に分類し、「法人×リピート」を主戦場と位置づけました。この層にそれぞれの層に対して、どの程度のマーケティングリソース(営業人員も含む)を配分するかどうかが、宴会部門の売り上げを伸ばす鍵になります。

主戦場を明確にすることで、限られたリソースがどこに向かうべきかが組織全体で共有されます。「何となく全方位で動く」から抜け出す最初の一手です。

2.リピートは、「可否回答」ではなく「提案型営業」で守る

主戦場であるリピート顧客の維持に有効なのが、提案型営業です。

「ご希望の日程は空いています」「ご要望のプランで対応できます」——こうした可否回答は、幹事に「では他とも比較してみよう」という判断を与えてしまいます。

代わりに、「同窓会であれば、この日程の方が参加率が上がる傾向があります」「100名規模であれば、この会場レイアウトが過去の事例でも好評でした」という、成功体験を根拠にした提案をする。すると、幹事の頭の中に「ここに任せれば安心だ」というイメージが生まれ、価格比較ではなく信頼で選んでもらえるようになります。

この提案力を「個人の才能」に依存させないために、ポジティブドリームパーソンズでは提案コンテストを定期的に実施しています。営業が持つ成功事例を全員の共有財産にすることで、ノウハウが組織に蓄積され、チーム全体の提案レベルが底上げされていきます。

3.新規は、プラットフォームを使って「攻める」

法人新規のように事前の行動が見えない層や、毎回会場を変える幹事へのアプローチには、プラットフォームを活用した能動的な新規獲得が有効であると中村氏は語ります。

ただし、プラットフォームに掲載するだけでは十分ではありません。中村氏が力を入れているのが、「受け入れ側の仕組み作り」です。

宴会集客における課題のひとつが、婚礼事業との枠の衝突です。同じバンケットを婚礼と宴会で共有している施設では、どちらを優先するかの判断が現場でブレてしまうことがあります。これを解消するために、まず婚礼と宴会の予算・KPIを分離させ、単価だけで判断しない構造をつくること。次に、婚礼の主戦場である土日祝以外の平日枠を宴会優先枠として事前に確保し、問い合わせに即座に答えられる状態にしておくこと。

送客サービス経由の問い合わせでは、「すぐ空き確認できる施設」が選ばれます。現場が迷わず判断できる仕組みを整えることが、成約率に直結します。

最後に確保した枠を「埋める」施策——宴会フェアの計画・実施——を組み合わせることで、枠を無駄にせず需要を創出するサイクルが回り始めます。

「人にしかできない仕事」を加速させる時代へ

セミナーの締めくくりに、村田氏はこう語りました。

「人と人をつなぐ場を作るこの市場は、AIに代替できない。TAIANが目指すのは、AIで仕組みを整えることで、人にしかできない仕事を加速させていくことです」

データを読み、仕組みを整え、プラットフォームを活用する。この土台があってはじめて、宴会担当者が幹事と向き合う時間と質が生まれます。今日から使える打ち手は、すでにみなさまの周りにもあるのではないでしょうか。

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