2026年6月19日、ブライダル産業フェア2026にて、人とAIの融和によって集客・成約率の向上を図る仕組みを解説するセミナーが開催されました。
登壇したのは、ディライト株式会社une osaka事業責任者兼プロデューサーの提坂紅緒氏、会場責任者兼プランナーの松本沙良氏、そしてAIコンサルタントである株式会社TAIANの野村壮耶氏です。
une osakaのコンセプトは「第六感を感じられる結婚式」。独自の世界観でカップルを魅了しています。
本セミナーでは、une osakaのこだわりと現場でのAI活用について、実践論をもとに議論が交わされました。
進化するAIと婚礼業界における活用事例
日々の献立を考えてもらったり、美容プランを分析してもらったりと、AIを日常で使う機会は増加しており、いまや欠かせない存在になりつつあります。
結婚式準備においても、オープニングムービーの生成などカップルが活用するケースが見られるようになりました。 この進化は止まることなく加速しています。
2026年現在、人が指示を出しAIが実行する受動的な段階(画像生成など)から、自律的に考え行動する「エージェント」の段階へと広がってきています。
海外では、カップルが結婚式準備の全工程をAIエージェントと共に進めるプランニングAIや、顧客の意図をくみ取り問い合わせ対応から予約確保までを24時間担うAIエージェントも登場しています。婚礼分野でも自律型AIが少しずつ広がる中、日常からAIを使い慣れておくことが重要だと野村氏は話しました。
une osakaが実践する、婚礼業界での具体的なAI活用

AIの必要性が高まる一方、日本の中小企業の約60%がAI導入に消極的だという調査結果もあります※。
「ツールを入れても成果に結びつく実感がない」
「具体的にどう接客に活かすのかイメージが湧かない」
「結局、使えるスタッフと使えないスタッフに分かれてしまう」
――こうした「関心はあるが進め方がわからない」という課題に取り組み、AIを集客と成約率向上につなげたune osakaの提坂氏が、具体的な活用方法を説明しました。
ディライトがune osakaを展開するうえで障壁となったのは、ターゲットとするラグジュアリー層に関する知見が少なく、担当できるプランナーが限られていたことでした。この課題を解決するAI活用法として、セミナーでは以下の3点が紹介されました。
1.AIで仮想ターゲットを創出する
年齢、価値観、予算、関心領域に加え、生活感や好みそうなブランドなどの嗜好をAIに学習させ、「仮想ターゲット」を作り出します。
これにより、最適なトーンやキーワード、訴求軸といったコミュニケーションのポイントの提案を受けられます。この繰り返しにより、知見が少なかったラグジュアリー層の嗜好性やZ世代の価値観への理解を深めることができたといいます。

2.フェアの訴求ポイントをAIでブラッシュアップする
仮想ターゲットから得た知見をもとに、フェア訴求のどの部分が刺さるのか、より刺さるにはどうすればよいかをAIと壁打ちします。
自社の観点だけで訴求を作成すると偏りが生じがちですが、外部情報も取り入れながらAIと検討することで、客観的に魅力的な訴求を生み出せているといいます。

3.訴求に合わせて写真をAIで加工する
DMやパンフレット、Web広告に展開する際、原稿に加えて写真の加工も行いました。従来、写真の印象を変えるにはバンケットの装飾や人員、時間の確保といった工数が必要でしたが、AIを使うことで短時間で対応できるようになりました。
バンケットの実写はそのままに、椅子の配置や花の装飾などをトレンドに合わせて加工しています。当初はAIの出力に不安もありましたが、実際にAIが作成した写真や言葉選びにカップルが目を留め、世界観への共感から来館につながるケースが多く見られました。
以上の仮想分析・仮説検証・訴求のブラッシュアップという3つのステップにより、知見の少なかったターゲット層の心をつかみ、集客につなげることができました。

「見えないホンネ」を捉える接客で成約率を上げる
問い合わせ後の成約率向上の取り組みとしては、リコンファームやメール送信、接客ロールプレイングなどさまざまな手段があります。
une osakaもこうした取り組みを行ってきましたが、中でも役立ったのが、TAIANが提供する行動分析AIだといいます。
行動分析AIとは、Web上で予約したカップルの行動データから興味関心のサマリーを自動で抽出し、成約につながるパターンを分析・提案するシステムです。
来館前のアンケートや電話での発言からは見えない「どの写真で手が止まったか」「どの文章を熟読したか」といった画面上の行動を可視化し、アンケートの行間にある本当のこだわりを把握したうえで、初対面から深い共感を生む接客を可能にします。
une osakaがメインターゲットとするラグジュアリー層のカップルは、本音をあまり表に出さない傾向があります。そうしたカップルとの接客における会話を構築するために、行動分析AIの活用が進められてきました。

活用場面は業務フローの中で2回あります。
1つ目は、予約後に「Web上の行動をOiwaiiで確認」する場面です。その後のリコンファームでは、行動を把握した前提で不足情報の聞き取りやホスピタリティの提供に注力できます。
2つ目は、担当者アサイン後、初回接客までの「商談対策」の場面です。行動ログからカップルの趣向を詳細に分析して仮説を立てることで、時間をかけた接客準備が可能になります。
この2点により、経験に頼りがちだったリコンファームと初回接客の業務が、経験の浅いプランナーでも対応できるようになりました。実際にune osakaでは、行動分析AIの活用によって、若手プランナーがラグジュアリー層の接客を担当できるようになったといいます。

成約率だけでなく、新人トレーニングの強化にも
行動分析AIの効果は、システムとしての成果にとどまりません。プランナーの育成においても重要な役割を果たしています。 これまで、カップルの分析に基づく接客ストーリーの構築は、ベテランプランナーが経験をもとに導いてきました。
しかしAIが分析を言語化することで、新人プランナーもカップルに対する仮説を立てられるようになり、自ら考えて議論する姿勢が生まれています。実際の接客を重ねながら主体的に仮説検証を行うプロセスが、プランナーの自信や学びにつながっているといいます。
新人プランナーだけでなく、トッププランナーである松本氏も、行動分析AIが示す仮説によって自身の経験則への確信を深め、接客の質のさらなる向上につながっていると話しました。 全体的に成約率が向上したことで、担当決めの際も契約獲得の可否ではなく、お客様との相性を基準に選べるようになったといいます。

AI時代も変わらない、大切なこと
便利なAIですが、提坂氏と松本氏が活用にあたって大切にしていることがあります。それは、最後は人が判断し、自分の言葉で話すということです。
松本氏は次のように話しました。
「接客業は、人がご縁を結ぶからこそ生み出せるものがあると信じています。AIと接客業は対極にあるように見られがちですが、私はむしろAIが人の個性や感性を最大限に生かしてくれるものだと考えています。だからこそ、AIの出力はあくまで補助、素材であり、最後は自分の言葉でお客様に温度感を届けることが大事だと思います」
AIやシステムは一見、婚礼業界とは折りが合いにくいように見えることもあります。それは、数字だけに表れない価値を提供することに本質があるとのお声をお聞きすることも多いからです。
しかし、私たちTAIANが目指すのは、その価値を失わせることではなく、人だけが作れるその価値をさらに輝かせる事です。数字の分析や単純作業、業務整理などの問題を解決し、プランナー様が本質的なプランニングに全力を割けるような環境を作り出すことを第一に考えております。
今回ご登壇いただいたディライト株式会社une osaka様は、AI活用の前例が無い中でまさにその道に挑み続けていらっしゃると感じました。人間だからこそ作り出せる価値を提供する私たちは、AIが進化するこの時代にAIと同じ仕事をしているわけにはいきません。広がるAI活用にどうついていくか、そのヒントが得られたセミナーだったのではないでしょうか。

